デザイン初心者でも大丈夫? Adobe Express ワークショップで感じた可能性

なぜ今、エンジニアにデザインツールが必要なのか
電子工学科の教員として日々感じているのは、優れた研究成果と、それを社会に伝える力のギャップです。我々の研究室では、光機能材料・デバイスや回路設計なども行っておりますが、産業界との連携を進める中で痛感するのは「技術の価値を可視化する力」の重要性です。先日参加したAdobe Expressワークショップは、この課題に対する一つの解答を示してくれました。
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学生向け「学園祭ポスター・チラシを作ってみよう!」Adobeワークショップ開催のお知らせ(9/12開催@千住)
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参加したきっかけ― 研究と社会をつなぐ架け橋を求めて
研究室運営において、学術的な内容を一般の方にも分かりやすく伝える必要性を日々感じています。特に産学連携や社会実装を目指す際、従来の学術論文だけでは限界があります。また、学生の就職活動支援や研究発表スキル向上も重要な課題です。Adobe Expressのようなツールが教育現場でどの程度活用できるか、実際に体験して判断したいと思い参加を決めました。
当日の様子と新発見
ワークショップでは、基本操作から応用まで丁寧に説明していただきました。特に印象的だったのは、AI機能を活用したデザイン提案です。テキストを入力するだけで適切なレイアウトやカラーパレットを提案してくれる機能は、デザイン初心者にとって心強いサポートとなります。
しかし、これは単なる「デザインツール」ではありませんでした。複雑な研究内容を整理し、視覚的に再構成する過程で、自分の研究を新たな視点で見直す機会にもなったのです。動画編集機能やアニメーション機能も予想以上に本格的で、学会発表やオンライン授業での活用可能性を強く感じました。
実際に試してみたい方はこちらから:
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ブランドコンテンツをすばやく簡単に作成 | Adobe Express
https://www.adobe.com/jp/express/
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使い勝手・セキュリティ面の印象
Adobe Expressの最大の特徴は、その直感的なインターフェースです。初見でも迷うことなく操作でき、特別なデザイン知識がなくても成果物が作れるため、学生にも教員にも敷居が低いと感じました。
クラウドベースのツールなので、研究室、自宅、外出先など場所を選ばず同じ環境にアクセスできます。ファイルのバージョン管理や複数ユーザーでの共同編集もスムーズで、共同研究や授業の教材制作にも有用です。大学の包括ライセンスを通じて利用できるため、学内認証がしっかりしており、セキュリティ面でも安心して使えます。
著作権・AI利用時の注意点
近年はAIや外部素材の活用が容易になった一方で、「著作権」や「利用ガイドライン」の遵守はこれまで以上に重要になっています。ワークショップ内でも強調されていましたが、たとえば有名キャラクターやブランドロゴを無断で利用することは厳禁です。また、Adobe Expressや生成AIで作成する際も、公序良俗に反する表現(性的・暴力的なもの等)はシステム側でも自動検出/削除の対象となりますし、学内規約上も明確に禁止されています。
使用する画像は必ず自分自身または研究室で著作権を保有しているものを選び、Adobe Stock等の素材は「再配布・他サービスへの転用不可」など利用条件を守る必要があります。生成AIを使う場合も、プロンプトに個人情報や機密データを含めない配慮が求められます。
教員の感想
電子システム工学科の教員として最も驚いたのは、その使いやすさです。以下は、別途紹介されたIllustratorの機能を使い、わずか1分で作成した猫のイラストです。
これは単に「簡単に絵が描ける」という話ではありません。従来、我々が「専門技能」として諦めていた領域が、テクノロジーによって民主化されたことを意味します。プログラミングがローコード化していく流れと同じ構造的変化が、デザインの世界でも起きているのです。専門的なデザインスキルがなくても、直感的な操作で美しいコンテンツが作成できる。研究発表から授業資料まで、幅広い用途に対応できる万能ツール。そして何より、時間をかけずに高品質なコンテンツを作成できるため、本来の研究や教育により多くの時間を割くことができます。
Adobe Expressのようなツールは、我々の研究を「象牙の塔」から解放し、社会実装への架け橋となる可能性を秘めていると感じました。学生さんには「研究内容を魅力的に伝える力」を身につける絶好の機会として使ってみてほしいと思います。デジタルネイティブ世代の学生たちは、我々が思う以上に素早く習得し、予想外の活用方法を見出してくれるでしょう。電子システム工学の未来は、技術革新だけでなく、その技術をいかに社会と接続するかにかかっています。ぜひ、皆さんも体験してみてください。