社会人インタビューvol.18: 続プラントエンジニア(電気設計)編 – メタウォーターという選択肢

先日、当研究室の学生たちに向けて、特別講演が行われました。

講師を務めてくださったのは、メタウォーター株式会社でプラントエンジニアとしてご活躍中の村上先輩です。石川先輩に続いて、今回は村上先輩が単独で、より詳しく水処理プラントの電気設計についてお話しいただきました。

社会人インタビューvol.12。続プラントエンジニア(電気設計)編

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メタウォーター株式会社
https://www.metawater.co.jp/
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村上先輩は2024年卒の工学部二部電気電子工学科(NE科)出身で、現在はメタウォーターの電気基本設計部門で働いています。秋葉原の本社に勤務されており、研究室OB訪問がきっかけで入社を決めたそうです。

半導体からプラントへ – OB訪問が変えた進路

村上さんが「メタウォーターって、この間の卒業生セミナーで名前聞いたことある人いますか?」と聞いたら、数名が手を挙げました。まあ、BtoB企業の宿命ですね。でも村上さん自身、当初は半導体系を目指していたそうです。

それが変わったきっかけが、まさにこの研究室のOB訪問でした。3年生の時に、ちょうど今回のような説明会で石川先輩の話を聞いて、「プラント会社もいいかもしれない」と思い始めた。水処理という社会インフラを支える仕事の貢献度の高さ、そして福利厚生の充実。それが入社の決め手になったとのことです。研究室ブーストが行われてしまったようです。

「水処理」と聞いて、ピンとくる電気系学生はいるか?

正直に言うと、いないと思います。メタウォーターは日本ガイシと富士電機の水処理部門が2008年に合併してできた会社で、プライム市場に上場しています。売上高1,790億円、国内42拠点、海外4拠点。主な事業は浄水場や下水処理場の設計・建設・運転維持管理。

皆さん、小学校の時に浄水場見学に行きませんでしたか? あの浄水場に機械を納めているのが、メタウォーターのような会社です。東京でいえば、北千住から3駅ほどの金町浄水場にもメタウォーターが関わっています。私たちが毎日使っている水道水、その大元を作っているわけです。

基本設計部門のリアル

村上さんが所属しているのは「基本設計部門」です。

メタウォーターの事業はBtoG(Business to Government)が中心です。つまり、お客さんは官公庁や自治体。営業がガンガン売り込むのではなく、お客さん側から「こういう工事をしてほしい」という依頼が来る。その要望に対して、技術的な提案をするのが村上さんの仕事です。

具体的には:

  • お客さん(官公庁や自治体)との打ち合わせ
  • 基本仕様の決定
  • 工程管理
  • コスト管理
  • 技術提案

面白いのは、お客さんと直接話せるという点です。メーカーの設計職だと、なかなかお客さんの顔は見えません。でも基本設計部門は、お客さんと打ち合わせし、現場調査にも行く。技術的な知識を使いながら、お客さんの課題を解決する。

村上さんは神奈川エリア担当で、週に1回か2週間に1回程度、日帰り出張があるそうです。相模原に行って帰ってくる、といった感じ。北陸や東北の担当だと、月に1回程度は1泊2日の出張もあるとのこと。ただし、基本的にずっと家を空けるようなことはないそうです。

MWの電気基本設計の特異性:「設計者が『現場の完成』まで責任を持つ」

ここが最も重要なポイントです。

一般的に分業される「基本設計」と「プロジェクト管理」の双方を行うのがメタウォーターの電気基本設計の特徴で、案件受注から現場施工まで全工程に包括的に携わります。実際の施工管理(現場代理人業務)は行いませんが、現場工程や制約の深い理解が不可欠で、設計段階でのトラブル回避、現場施工中であっても円滑なプロジェクト進行の支援を行います。

つまり、自分が設計した設備を納入するまで一貫してマネジメントし、技術者として全体を俯瞰しながら学んだ知識を活かす。技術者として一番の腕の見せ所です。これは、設計の意図を正確に現場に反映できるという意味で、非常に重要です。プラント全体を理解できる。電気電子工学科で学んだ知識が、プロジェクト全体の管理に活きるわけです。

セラミック膜ろ過システムという強み

質疑応答で学生から「セラミックを導入するメリットは?」という質問が出ました。

村上さんの答えは明快でした。「浄水場を新しく作る時に、セラミック膜ろ過システムを導入すると、処理工程が大幅に簡略化されて、建築費用が抑えられます」。

従来の浄水場は、沈殿池、ろ過池、消毒施設など、複数の工程が必要でした。セラミック膜ろ過システムを使えば、これらを一つの設備で処理できる。つまり、建物自体が小さくて済む。コスト削減と性能向上を両立できる技術で、メタウォーターは業界トップクラスのシェアを誇っています。

福利厚生が異常に充実している件

ここからが驚きです。

就業時間: 9:00〜16:45

17時前に帰れます。しかも最近15分短縮されて、この時間になったそうです。5時前に仕事が終わる会社、なかなかないですよね。

フレックス制度(コアタイムなし)

9時スタートが基本ですが、9時半に来ても怒られない。その分30分多く働けば問題ない。朝の通勤ラッシュを避けられます。「8時50分には絶対いなきゃ」みたいなストレスは全然ないそうです。

他にも驚異的な補助系魔法(バフ(buff))が施されておりましたが、説明は割愛します!

東京電機大学卒が多い理由

村上さんの部署は10人ほどのグループで、そのうち4人が電大卒だそうです。メタウォーターのホームページにも電大卒の方が紹介されているとのこと。電気電子の基礎がしっかりしていて、現場でも図面でも対応できる。プラント業界と電大生の相性は、実は非常にいいんです。

就職活動のリアル – 12月から動き始めても間に合う

村上さんが本格的にプラント業界を調べ始めたのは12月頃。つまり、今の時期です。当初は半導体系を目指していたが、OB訪問でメタウォーターを知り、方向転換しました。「12月頃にこのOB訪問があって、本当にこのー、私がずっと3年生の時に、こういう研究室OB訪問があって、ほんとこういう同じ感じでやった時に来ていただいた先輩の話を聞いて、そこまでずっと半導体系とかそういうのを目指そうと思ったんですけど、メタウォーターっていうプラント会社なんですけど、そういう大きなことをやっている会社もいいかもなと思って」。

資格については「入社前に特別な資格は必要ない」とのこと。村上さん自身、何も資格を取らずに入社しています。電験三種とか第二種電気工事士とかは、入社後に取ればいい。「私も何も資格勉強とかも何もせず、今ここまで来てるので特にないかなと思います」。

学生から「第二種電気工事士も取り終わって」という発言があると、村上さんは「もう使えると思います。こういう電気系の資格はすごい強いと思います」と答えていました。

SPIについても「本を買ってやるぐらいですね」とのこと。メタウォーターはエントリーシートで落とすようなことはあまりなく、実際に会って話すことを重視しているそうです。「エントリーシートですっからかんじゃなければ、多分、SPIまあある程度勉強したほうがいいですけど、そんなにガチガチにやらなくても多分大丈夫かなと思います」。

「作る」だけが技術者じゃない

今回の説明会を聞いて、学生たちも「技術者=メーカーで開発」という固定観念の狭さに気づいたと思います。

水処理プラントという、社会インフラを支える仕事。お客さんと直接話しながら、技術的な提案をする。設計から施工まで一貫して関わる。多様な設備・技術に触れられる。しかも、福利厚生が異常に充実していて、ワークライフバランスが取れている。

村上さんが強調していたのは、「電子システム工学科で勉強する電気回路の知識があれば、十分ついていける」ということです。配電盤は確かに大きい(2メートル以上)ですが、基本的な回路理論は大学で学んだことの延長線上にあります。半導体のように微細な世界ではなく、大きなスケールで電気を扱う。それがプラント業界の電気技術です。

普段あまり目にすることのない水処理プラントの内部構造や、BtoG(Government)ビジネスの特徴に、学生たちも興味津々の様子でした。お話を聞いて、改めて電気設計の奥深さを感じ、水処理という一見すると電気とは関係なさそうな分野でも、電気設計の知識が不可欠なのだと実感しました。

市場価値という観点で考える

IT企業は華やかです。でも、人材の流動性が高く、常に新しいスキルを学び続ける必要があります。

一方、水処理プラントという仕事は、長期的に通用するスキルです。水道インフラは今後も使われ続けます。老朽化した設備のメンテナンスは、これからますます需要が増えます。設⽴から17年と若い会社ですが、前身となる会社の実績があり信頼度が高い。だからこそ、コロナ禍やリーマンショックの最中でも業績が安定しているわけです。

設計・施工監督・プロジェクトマネジメントという経験は、転職市場でも評価されます。

まとめ

今回の講演で、電子システム工学科で学ぶ知識や技術が、様々な業界で役立つことを実感できる貴重な機会となりました。

講演の最後には、村上先輩から学生たちへ熱いメッセージが送られ、学生たちの心に強く響いたようです。華やかさだけが仕事の価値ではありません。地味でも、堅実で、社会貢献度が高く、しかも福利厚生が充実している仕事もあります。村上さんのように、2年目で「メタウォーターに入ってよかった」と思える。そういう働き方も、一つの選択肢です。

村上先輩、お忙しい中講演にお越しいただき、本当にありがとうございました。お話は、学生たちにとって大きな刺激となったことでしょう。

これからも電子システム工学科の学生たちが、各々の分野で活躍できるよう、サポートしていきたいと思います。社会で活躍する卒業生と在学生との交流は、学生たちのモチベーションアップにつながる素晴らしい機会です。今後もこのような講演会を定期的に開催し、学生たちの視野を広げるお手伝いができればと考えております。

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メタウォーター株式会社 採用ページ
https://www.metawater.co.jp/recruit/graduate/
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電気電子でプラント? と疑問に思うかもしれませんが、実は相性抜群です。君たちは、この業界の中で、どういう役割を果たしたいのか? まあ、正解なんてないです。でも、メタウォーターという選択肢があることを、ぜひ覚えておいてください。

次回のインタビューもお楽しみに!

 

 

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