今年のインフル—データが示す「例年と違う」流行

数字が語る「異例の事態」
今年のインフルエンザ、例年とは明らかに違います。

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東京都感染症情報センター:インフルエンザの流行状況
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/
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東京都は2025年11月13日に「流行警報」を発表しました。11月に警報が出るのは16年ぶり、2009年の新型インフルエンザ以来のことです。昨年より6週間も早い警報発令——これは偶然ではありません。

全国の定点医療機関あたりの患者数は51.12人(11月第47週時点)。昨年同時期の2.36人と比べると、約22倍という驚異的な数字です。全国39都道府県で警報レベル(30人以上)を超えており、宮城県では89.42人、埼玉県では70.01人という水準に達しています。
学級閉鎖などの措置を取った学校・施設は全国で8,817件。休校250件、学年閉鎖2,244件、学級閉鎖6,323件——この数字は1週間で1.4倍に増加しています。
「若いから大丈夫」は通用しない
「高齢者の病気でしょ?」と思っていませんか?
厚生労働省のデータによると、インフルエンザ患者の大多数は19歳以下の若年層です。学級閉鎖が起きている8,817施設のうち、小学校が5,460件、中学校が1,848件、高等学校が782件。つまり、最も感染しているのは、まさにあなたと同世代の人たちなのです。
大学では学級閉鎖の制度がないため、感染が広がっても個人の判断に委ねられます。しかし、大学内での集団感染が発生すれば、講義の欠席が続き、グループワークのメンバーに迷惑をかけ、試験期間と重なれば単位取得にも影響します。
「自分は体力があるから」——その自信が、周囲への感染拡大を招くリスクになることも忘れないでください。
知っておくべき「異常行動」の話
ここからは、あまり知られていないけれど、知っておくべき話をします。
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厚生労働省:インフルエンザQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
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インフルエンザに感染すると、発熱後48時間以内に「異常行動」が起きることがあります。これは抗インフルエンザ薬(タミフルなど)の副作用ではなく、インフルエンザそのものによる症状です。薬を飲んでいなくても起こります。

報告されている異常行動の例:
- 突然走り出して屋外に飛び出す
- 意味不明な言動を繰り返す
- ウロウロする
なぜこれが起きるのか。高熱による脳の一時的な混乱(熱性せん妄)、免疫反応によるサイトカインの過剰放出、若い脳の未成熟さ——複数の要因が指摘されていますが、完全には解明されていません。
重要なのは、これは本人の意思とは無関係に起こるということ。自分の判断力や身体が一時的に「支配される」状態です。一人暮らしの大学生が高熱を出したとき、誰にも見守られていない状況でこれが起きたら——想像してみてください。
一人暮らしの学生さんは、発熱時には実家に帰るなどの対策を考えておきましょう。
試験・講義・就活——「社会的コスト」を計算する
インフルエンザに感染すると、学校保健安全法により「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで」は出席停止となります。
これを現実的に考えてみましょう:

期末試験1週間前に発症最低5〜7日間の勉強ストップ、追試の手続きグループ発表の前日に発症メンバーへの負担増、発表延期の交渉就活の面接日に発熱日程変更の依頼、印象への影響ゼミ合宿直前に感染不参加、または参加して周囲に感染拡大などです。
さらに、あなたが感染すると、講義で隣に座っていた友人、一緒に昼食を食べた同級生、同じサークルのメンバー——同年代への感染拡大の起点になる可能性があります。感染力の高いインフルエンザウイルスは、あなたの行動範囲にいる人すべてをリスクにさらします。
今、気をつけるべきことは
流行が早まった理由は、気候、ウイルス株の変異、集団免疫の低下など、複数の要因が考えられています。重要なのは、この流行に対して、一定の警戒を持って対応することです。
感染対策の基本は変わりません。手洗い、うがい、マスク着用、十分な睡眠と栄養。身近な人が発熱したときは、むやみに近づかない。自分に症状が出たときは、すぐに医療機関に相談する——これらは、特に難しいことではありません。
ただし、「気をつけていれば大丈夫」という気楽な態度は禁物です。データは、今年のインフルエンザがあなたの世代を最も狙っていることを示しています。
予約制の医療機関が逼迫している状況が続いています。発熱の症状が出たら、なるべく早く医療機関に相談してこの冬を乗り越えてください。

