社会人インタビューvol.16:山九株式会社という選択肢 – 電子系学生が知らないプラントエンジニアリングの世界

先日、山九株式会社の人事担当の宮本さんと、研究室4年生の久冨さんが参加して、3年生向けに講演をしてくれました。

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山九株式会社
https://www.sankyu.co.jp/
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宮本さんが「山九(サンキュー)という社名、知ってた人いますか?」と聞いたら、野球場の広告を見たという学生が1人だけ。まあそんなものかもしれません。BtoB企業の宿命です。でもこの会社、調べてみると1918年創業で売上高6,067億円、しかもコロナ禍やリーマンショックの最中でも過去最高益を更新し続けているという、地味だが確実に強い会社です。本社は東京都中央区にあるが、実際に働く場所は国内39拠点、海外14の国と地域に広がっています。

なぜ「電気電子」がプラントエンジニアリングなのか

説明を聞いていて、学生たちが一番ピンときていなかったのが「電気・電子系の仕事内容」でしょう。電気工事と聞くと、どうしても現場で配線をつなぐイメージを持ってしまいます。実際、質疑応答でも「電気工事士の資格は必須ですか?」という質問が出ました。

ここで補足すると、「電子システム工学科で勉強する電気回路の知識があれば簡単です」。そして重要なのは、電気プラントエンジニアの仕事は現場作業というよりも、設計や計画、マネジメントが中心になってくるため、市場価値が高いんです。働きながら資格が充実していき、ある意味「穴場」な職種になります。

プラントって何?という根本的な話

プラントというのは、都内に住んでいるとまず見る機会がありません。でも、私たちが日常使っている服も、スマホも、パソコンも、すべての工業製品の大元になる設備がプラントです。

プラントは大きく4種類に分けられます:

  1. エネルギー系:発電所など、電力を作り出すプラント
  2. 製鉄系:鉄鋼を製造するプラント
  3. 化学系:化学繊維、石油精製などを行うプラント
  4. 環境系:廃棄物処理場、下水処理場など

そして山九が得意としているのは、EPC(Engineering, Procurement, Construction)つまり設計・調達・建設の全工程を一貫して請け負うことです。設計して、製作して、輸送して、建設して、メンテナンスまで。このスケール感は、他の会社・業界ではなかなか味わえません。

設計から施工まで、電気・電子系の特異性

プラント業界での電気系の仕事には、興味深い特徴があります。

機械系の場合、設計部門と施工部門で人が変わります。図面を描く人と、実際にその図面をもとに工事を行う人が別なんです。でも電気系は違います。設計した人間が、実際に現地で施工監督もやる。つまり、どっちも自分でやるんです。

これは、設計の意図を正確に現場に反映できるという意味で、非常に重要なスキルになります。現地調査から設計、工事監督、制御盤の据え付け、ダクトの据え付け、ケーブル敷設、そして試運転まで。一貫して担当するからこそ、プラント全体を理解できるわけです。

ちなみに、私がマレーシアのUTMに滞在していた時、現地のプラント企業を訪問する機会がありました。そこで驚いたのは、若手エンジニアが当たり前のようにPlantStreamという3DCADを使いこなして、プラント全体の配管設計から電気設備の配置まで、すべて3次元でシミュレーションしていたことです。日本国内では「図面を描く」というと2次元の製図をイメージしがちですが、グローバルなプラント業界でもすでに3DCADが標準になっています。

設計した3Dモデルをそのまま施工図に落とし込み、現場でタブレットを見ながら施工監督をする。こういった最新のデジタルツールを使いこなせる電子システム工学科のメンバーが得意なスキルは、今後ますます重要になってくるでしょう。電子システム工学科で学んでいる皆さんなら、こうした技術への適応も早いはずです。

スケール感が違う仕事

山九の強みの一つが、超重量物輸送です。「ユニットどおり」という特殊車両を保有していて、1台だけで最大60トン、全部連結させると最大1万トンのものまで一度に運搬することが可能だそうです。高速道路、橋梁、プラントそのもの、風力発電の設置など、超巨大な設備を運びます。

プラント以外にも、自動車メーカーの車の耐久試験施設の電気工事や、千葉や大阪にある有名なテーマパークの遊具の据え付けとそれに伴う電気工事なども手がけています。プラントの電気工事に関わることが多いですが、中にはこういった特殊な仕事もあるわけです。

マレーシアからインドへ – グローバル展開のリアル

私が山九という会社を知ったのは、マレーシアのUTMに滞在していた時です。マレーシアで事業展開している日系企業を調査していて、山九の存在を知りました。当時、日系企業の多文化社会での適応戦略について研究していましたが、山九はまさにグローバル展開を積極的に進めている会社だったため、インタビューさせてもらいました。

国内39拠点、海外14の国と地域に拠点があります。電気系の仕事は特に中東、東南アジア、中南米などで多いそうです。

宮本さんの説明によれば、今稼働しているプラント以外にも、これから新しくプラントを立ち上げる場合は、まだ拠点がない国や地域に行くこともあるとのこと。特に電気系はプラント建設に関わることが多いので、実際に働いている社員は中国やアメリカなど、いろんな国に1年間とか半年間とか、その期間だけ行っている人もたくさんいるそうです。

グローバルに働きたいという希望があるなら、山九のような会社は最適な選択肢の一つだと思います。

IT企業ばかり見ている場合じゃない

質疑応答の最後に、久冨さんが就職を決めた理由を語りました。「自分は仕事をしていく上で、やりがいを一番重要視して考えていました。プラントやインフラ関係の話を聞いて、本当に大規模な仕事で、自分としてすごくやりがいを感じられると思ったんです」正直な答えだと思います。「やりがい」という言葉は時として企業側の都合よく使われますが、社会インフラを支える巨大設備を設計・建設するという仕事は、確かにスケールが違います。

IT企業ばかりに目を向けている学生も多いが、プラントエンジニアリングという選択肢も十分に検討する価値がある。特に電子システム工学科で学んでいる皆さんにとって、この分野は実は非常に相性がいいんです。

福利厚生の現実

新入社員研修は、入社後すぐに長崎県の平戸で2週間。その後、全国バラバラに配属されても、いろいろなコミュニケーションを取ってほしいという意味で、2週間過ごします。その後、機工系の総合職で採用された人は、福岡の北九州で1年間の技術研修。設計、施工管理に必要な仕事、機械系などの基礎的な授業を受けていき手厚い教育システムです。そして寮費が、水道光熱費込みで月6,000円。他にも帰省費用の年2回負担、奨学金補助。さらにカフェテリアポイントも支給される。これは旅行、書籍、ライブなど、ほとんど何にでも使える。

初任給に加えて、これだけの福利厚生。正直、かなり恵まれていると思います。

電子システム工学科の学生へ

今回のケーススタディーは、単純な配線作業というよりも、プラント全体のシステムの中で電気設備をどう配置し、どう制御するかという設計とマネジメントが主な仕事です。電気電子の知識がプラントだけでなく、自動車メーカーの試験施設やテーマパークの遊具の電気工事にも応用できます。山九は幅広い分野で電気工事を手がけているので、学んだことが活かせる場面は多いです。

宮本さんからの案内で、12月16日に大学開催の会社紹介もあり、山九さんもブースを出すとのことだ。興味のある学生さんには是非訪問してほしいと思います。また、会社説明会も随時行っているそうなので、エントリーしていただければと思います。

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山九株式会社 採用情報
https://www.sankyu.co.jp/recruit/
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最後に

研究室に配属を希望している3年生の皆さん、進路選択が始まります。大手IT企業だけが選択肢ではなく、プラントエンジニアリングという、社会インフラを支える仕事もあります。電気電子でプラント?と疑問に思うかもしれないが、実は相性もいいです。大学の電気回路を理解していれば、十分についていける。そして設計・計画・マネジメントが中心で、市場価値も高い。転職市場でも評価される職種です。グローバルに働きたい人には最適だし、国内でじっくり腰を据えて働きたい人にも対応してます。

今回、貴重な話が聞けて、ありがたいことです。参加した学生たちには、いろんな選択肢を見て、自分なりの答えを見つけてほしいと思います。そして、もし山九を選ぶなら、マレーシアやインドといった海外の現場でも活躍してくれればいいなと思いますね。こういう穴場があるということを、ぜひ覚えておいてほしいです。

 

 

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